私立中学受験科ブログ

小学生に奨める文学作品~夏休みの読書に~

こんにちは。

愛知県の私立中学受験や県外難関校受験をお考えの小学生とそのご家庭をサポートする、明倫ゼミナール私立中学受験科です。

さて、今回は、「夏休みを利用して、受験勉強の合間に文学的文章を読むなら」ということで、明倫ゼミナール国語科の田口先生に、お薦めの本を紹介してもらいました。

愛知県の私立中学受験では、ほぼ全部の学校で、物語文が出題されます。

読みなれていて、頭にすぐ場面を思い浮かべることができるだけでも入試は有利になりますね。


文学作品をいくつか紹介します。

小説を読むなら、対象学年が少し上のものをおススメします。受験国語で問われる心理描写が詳しいからです。

①『少年少女飛行倶楽部』 加納朋子 (文春文庫)

作者は"日常のなぞ"を題材にしたほのぼのミステリが得意な方です。

でも、これはミステリではなく、ストレートな青春小説。

中学1年生の海月(ミヅキ)は、腐れ縁の友人、樹絵里に誘われ、なぞめいた『飛行倶楽部』なる部活に入部するはめに。

ところがこのクラブ、部員は中2で部長の斎藤神(ジン)とその友人で野球部と兼任の中村海里のふたりだけ。あとひとり部員を入れないと正式な部活として認められない、ということで、まずは部員探しからスタートするのですが・・・

実はこれ、受験科の国語の教材『新演習』に冒頭部分が取り上げられていた作品です。

まず、登場人物たちのキャラが立っています。一見すると、傍若無人で偉そうな変人部長『神』、高所平気症の『朋(これで、なんと「るなるな」と読む)、おそるべきいじわる少女イライザ、野球が苦手な野球少年『球児』くん、など、くせのある登場人物たちが主人公の海月を中心に、「いかにして空を飛ぶか」というテーマの実現に向けて次第に団結していくさまは、ある意味感動的です。

名前ひとつとっても、主人公の海月=くらげ、海星=ヒトデ、神、天使(エンゼ)、朋(るなるな)など、命名の由来からして笑いを誘います。

ひとりひとりの性格、心情の変化もていねいに描きこまれているので、国語で『小説文』が苦手な人にはうってつけの本だと思います。

できれば近代文学の名作にもチャレンジしてみましょう。美しい文章、端正な文章に触れる絶好の機会だからです。

②『しろばんば』 井上靖  新潮文庫

主人公の洪作少年が親元を離れ、おぬいばあさんの許で成長していく姿を描いています。美しい信州の自然を背景に、友情、初恋、別れなど、普遍のテーマがきめの細かい文章でつづられ、胸を打ちます。なお、続編に、洪作の中学生時代を描いた『夏草冬濤』、高校生時代を描いた『北の海』があり、あとの作品になるほど、ユーモアがあふれ、「笑い」の要素が強くなっていきます。

③【春と修羅】 ~永訣の朝~ 宮沢賢治 ちくま文庫 他

宮沢賢治といえば、"童話作家"というイメージが強いと思いますが、実は賢治は詩人としても有名です。この『春と修羅』は、生前刊行された唯一の歌集。『心象スケッチ』という独特の手法で書かれた詩の大半は難解で、正直、何が書いてあるのかよくわかりません。ただ、その中でも、妹のトシとの死別を詠んだ『永訣の朝』は、おそらく誰が読んでも胸を打たれるのではないでしょうか。

生きている間は作家としても詩人としてもほとんど無名だった宮沢賢治。宗教上の理由から家族との対立も深まっていました。そんな彼にとって、唯一の理解者が妹のトシだったのですが、その最愛の妹が病でこの世を去ってしまいます。臨終の床で、トシは賢治に「あめゆきを取ってきてください」と懇願します。賢治は妹に「あめゆき」を食べさせようと、「まがったてっぽうだまのように」外に飛び出していくのですが・・・。

まもなくこの世を去って行こうとする妹への慟哭には、鬼気迫るものがあります。ただ、この詩がいかにも宮沢賢治らしいのは、妹の死の悲しみの向こうに、透き通った"宇宙"が垣間見えることです。生々しい心の叫びが一度宇宙空間に出て、そして透き通った"祈り"となってもどってくるような後半部は、『銀河鉄道の夜』につながる深い喪失感と悲しみをたたえているようです。

『詩』なんて教科書以外では読んだことがない、という人が多いのではないでしょうか。でも、みなさん、好きな歌なら普通に聴いたり、歌ったりしますよね。詩も同じです。まずは学校の図書室や近所の図書館で、どれか一冊、詩集を手に取ってみてください。誰にも必ず『相性の良い詩』というのがあると思います。少ない字数で、小説や映像以上のインパクトを与えてくれる詩と出会った時、きっとあなたの感性はぐんと豊かになることでしょう。

以上、田口先生の投稿でした。

読書の習慣がない人は、「読書なんてめんどくさい」「本を読んで何が楽しいの」と思うかもしれません。

ゲームをやらない人は、ゲームに熱中している人を見て、「あんなことに熱中して・・・。あんな小さな画面を見て、何が楽しいのだろう」と思うでしょう。

何事も「やってみて」「続けてみて」楽しさがわかってくるものだと思います。

4・5年生は、夏休みを利用して、「1冊読破」してみましょう!!

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